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Nirvana「Scentless Apprentice 」

90s

From 「From the Muddy Banks of the Wishkah」(1996)

芸術におけるバランスの重要性に関しては以前からお伝えしてきたところだが、ことニルヴァーナについてはそのバランスの取り方がヒジョーに上手い。バランスとはつまり、アイドルがアイドルっぽいことを歌ってもただのアイドルだが、アイドルがメタルを歌うことで新たな価値観が生まれるということだ。彼らの音楽は「シリアス」と「おバカ」のミックス加減で勝負しているといっても過言ではない。

彼らの出世曲かつ代表曲かつ歴史的名曲である「Smells Like Teen Spirit」のタイトルはデオドラントスプレーから取られたことは有名で、そのPVもハードなディストーションギターとチアガールのコントラストの衝撃は相当なものだっただろう。※ちなみに散々比較されてきたPearl Jamはどうだったかというと、ハードロックとハードコアの融合という意味で「おバカ」と「シリアス」のバランスを取っているのだ。ニルヴァーナは”ポップなハードコア”、パールジャムは”シリアスなハードロック”と形容できるのではないだろうか。

そんな彼らのベストバランス大賞が「Scentless Apprentice」である。イントロでこれから祭でも始まんのかよっていうくらいの民族音楽的リズムパターンが衝撃的。デイヴ・グロールのドラムの圧は凄まじいが、リズム自体はむしろ平和そのもの。この平和な祭ビートに歪んだギターとベースが乗っかった瞬間に「祭」+「ハードコア」の土台が完成するのだ。

イントロのドラムパターンをいかにおいしく料理するかだけに焦点を合わせている潔さは脱帽である。歌メロは聴きようによっちゃあ遠洋漁業の漁師さんのかけ声のようなノリでもあるが、有無を言わせない重戦車グルーヴと組み合わせることでまた快感に変わるという見事なハイブリッド。そしてサビは裏返ったシャウトでハードコアに振り切る。

例えばジミ・ヘンドリックスの音楽は今聴いても「なんじゃこら…」という未知のものに対する違和感があるが、ニルヴァーナのハードコアな楽曲にも同様の印象を受ける。Nirvanaのラストオリジナルアルバム「In Utero」にはその違和感が満載である。名作ではあるものの、そういう意味では初心者には結構とっつきにくさもある。

よって今回はライブバージョンの「Scentless Apprentice」をオススメしたい。原曲よりも大分アップテンポで演奏されていて、リズムの楽しさがより強調されているのと、単純に演奏が生々しくてカッコいい。彼らの楽曲の中で聴いた回数でいけばライブバージョンの「Scentless Apprentice」がダントツで多い気がする。ポップとハードコアの狭間でバランスを取るニルヴァーナ、そういう視点で聴き直すと彼らの偉大さに改めて気づかされる。

Apple Music: Nirvana Scentless Apprentice

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