from「Under the Iron Sea」
なんか雰囲気が好きな曲
雰囲気が好きな曲ってあるよね。なんかめちゃくちゃメロディが良いとか言うわけでもないのに、その曲がまとっている全体の空気が自分の奥底の感覚にマッチするというか。
そういう音楽って大抵過去に見た風景を思い起こさせる。それで懐かしくてちょっと泣きそうになる。音楽の不思議な作用の一つと言える。
わたしがかねてから主張している「車で旅行に行くなら新しいアルバムを2枚選んで聴きまくれ論」は、音楽は記憶と密接に結びつくという特性を活かした人生を楽しむワザのひとつである。
つまり、旅行中に聴いていた音楽に触れると瞬間的にその時の感情へと連れ戻してくれるのだ。そんな音楽が多くあればあるほど人はちょっとだけ幸せになれる。
そういう意味では「なんとなく雰囲気が好きな曲」は万能なのだ。特にその曲に対する具体的なエピソードはないにも関わらず、様々なセンチメンタルな記憶を呼び起こしてくれる。
わたしにとってKeaneの「Crystal Ball」がそれに当たる。
雰囲気ええわぁ。なんかね、美メロをサラッと歌うさりげなさが凄くいい。サビなんか軽いファルセットでかわしちゃってる。
バンドの演奏はどんどん熱を帯びていくのに、歌はさりげないのよ。ゆっくり丁寧に演奏したら感動的な名曲になり得るメロディを持ち合わせている。
そう、この曲のポイントは、バラード系のメロディをアップテンポで演奏するという点である。それにより、大合唱を誘うアンセムチックな大曲になることを避けられたのだ。
もうそういうのはコールドプレイに任せとけばええやん?という強い意志の表れと言える(ほんまかよ)。
2nd「Under the Iron Sea」は、大ヒットしたファーストと比較して様々な創意工夫が見える。バラード路線でヒットを連発してしまったものだから、「Is It Any Wonder」でギターを使わずにキーボードで歪んだギターっぽいサウンドを再現するなど、チャレンジングなアルバムなのだ。
それが「Crystal Ball」の独特な雰囲気を作ってんだなぁ。アルバムの完成度はファーストには及ばないが、「Crystal Ball」はいつまでもわたしにとって大切な曲なのである。
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