from「Masseduction」(2017)
泣いてまうやろ、ジョニー
バロック調とも言うべきクラシカルなメロディーや、ともすればチープな電子音に小気味好く身体を揺らせば、俄かに掻き鳴らされるノイジーなギタープレイ。支離滅裂な要素が渾然一体となり、それはまるでアートとして眼から耳から私たちの感性を刺激する…
…んやないやろか。St.VincentことAnnie Erin Clark嬢の事である。実際ライブ映像とかみて、パフォーマンス含めてかっけぇな…って感想に嘘はない。ただなんか1/1スケールで好きと言いきれない何かがあり、もやもやしてた。10年ぐらい。
まぁそういうのってインディーロックあるあるやし、てか評論家筋がハードル上げすぎやろ、ワイ聴き専一般リスナーやしと自分を宥め賺し、でもお気に入りの曲も見つけたりして付かず離れず。10年ぐらい。
しかし11年目はない。何故なら出逢ってしまったのだから。アルバム「Masseduction」収録「Happy Birthday, Johnny」に。
極限までにシンプルなピアノの伴奏とともに歌は始まる。この歌メロなんかちょっとテンポを上げて、バンド演奏が入れば極上ポップになりそうなほど弾むメロディーなのに、どうしてこんなにも寂しげなのか。
さらに詩の内容はとてもパーソナルな部分について書かれているように思う。
友人か恋人かも判然としないジョニーとの若き日々。多分二人は散々な別れ方をしたのだろう。整理はつかないし、恨みすら残っているかもしれない。それでもふっと思い出し、その時だけは後も先もなく、真っ白な気持ちで口ずさむ。
happybirthday,Johnny
Wherever you are
泣いてまうやろ、いい加減にしろ!
しかもこのサビ、ささやか且つ美メロすぎるやろ。いつもならBメロでリズム隊入りーの、サビでギター歪みーの、クサめのギターソロから大サビ大爆発でエモエモ言うとる私だが、この曲は終始ピアノの伴奏で進行する。(間奏で漂うような空間的ギターが聴ける。最&高)
音数や展開こそ少ないけれど、St.Vincentの、いやAnnieの歌心を堪能出来る名曲として、数多ある緻密でスリリングな楽曲を抑え、本曲を全力で推薦したい。
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