「When We All Fall Asleep, Where Do We Go?」(2019)
アイドル、ビリー
最近うちの娘はE-girlsばっかを聴きよりまして。赤ん坊の頃から、いやお腹にいる時からせっせと洋楽を聴かせていた私の努力はなんだったのかと。アイドルなんぞ聴かずにWilcoを聴けWilcoを!と言いたいところですが、耳に飛び込んでくるE-girlsを聴いてると、なかなかどうしてよく出来とるじゃないかと。いかん、いかん、ほだされるなオレ。
一方、今世界のティーンのアイドルはこの人なんだそうで。その名もビリー・アイドル、ではなく、ビリー・アイリッシュ。
最初はどうせ若い連中が聴く音楽でしょと全くスルーしていた私ですが、何?デイヴ・クロールが誉めとるだと!何?トム・ヨークが誉めとるだと!と、外圧にめっぽう弱い私は何となくYoutubeでチェックしたところ驚いたのなんのって。めっちゃカッコええやないかいっ!
彼女の魅力は声だのファッションだの態度だの色々言われておりますが、当サイトの贔屓筋としましては、先ず耳に残るのがメロディ。先ずはここですよね、ご一同。
元来作為的なものを排除する性質なのか、作為の無い始めからそこにあったかのようなメロディは、ソングライター・チームのあの手この手の入ったメロディには無い自然美がある。と思うのはビリーと兄フィネアス・オコネルに関する情報バイアスがかかっているせいか。それにしてもこの兄妹が生み出すメロディのまぁエレガントなこと。
1stアルバムにはそんなイデアのメロディがてんこ盛り。尖ってようが、アンセム系であろうが、悲しさいっぱいであろうが兎に角エレガント。通常この手のアルバムには歌詞カードが手放せないんですが、リリックを読まずとも情感が響いてくる。音楽が言語を越えるとはこういうことを言うのですな。
そしてそこに被さる、声を張らない歌唱力が魅力の彼女のボーカルとの親和性はお見事。しかも「私は王になる」と宣言しながらまるで他人事のようなリリック!しかも韻踏みまくりのアクセント転がしまくり。なんじゃい、この正しさは!!
中でも私を虜にして止まないのが「I Love You」。ビリーが即興で歌っているのを今まさに部屋で直に聴いているんじゃないかと思わせる自然なメロディ。こういうのは幾らキャリアを重ねようが技術で書けるもんではございません。
アコースティック・ギターで始まり(無機質なサウンドにこういうのをポンと入れてくるところがまたニクイ!)、トム・ヨークばりのプラスチックでありながらも至極人間的な声で歌う「フーゥ、ウウウ~」がたまりません。
静かに畳み掛けるサビはあたかも沈みゆく階段のように一向に上へとあがれない。けれど最後のフックが終わった瞬間にはもう二度と同じところへは戻れないという乾いた叙情。我々はそこに目に見ぬ誰かの感情が共鳴する瞬間を見る。
勿論彼女は降って沸いた天才ではないが、自らをBad Guyと言いながら、ドラッグもタトゥーも要らないと言う意志の強さは眩しいったらありゃしない。この正しさには抗えない。
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では私も。とはいえ前身のローリング・サンダー・レビュー以来お馴染みの泣く子も黙るロッキン・ピアノマン、ベン・フォールズのことをよく存じ上げておりませぬ。手元にあるのはただ一つ。英国の作家、ニック・ホーンビィとの異色のコラボ・アルバム『Lonely Avenue』のみでございます。
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