from 映画『アバウト・タイム愛おしい時間について』オリジナル・サウンドトラック(2012)
ナンバーワンにならなくてもいい
The Luckiestがベンフォールズのベストではないし、収録アルバムrockin’ the suburbs中でもナンバーワンとは思わない。
それでも本曲を推すのはきわめて私的な思い入れに拠るもので、その様な自分の感性から切り離された「名曲レクイエム」状態は多くの人が経験しているのではないだろうか。
わたしは楽曲を、また楽曲が主題歌に起用された映画「アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜」を友人から教えてもらったのだが、最近になってNetflixで映画が配信されているのに気がつき、懐かしさにせっつかれて鑑賞しなおした次第。
ネタバレは回避したいので、ここで映画の細部に触れることはしないが、個性的で愛すべき登場人物たちや、物語のテンポ感、ウイットに富んだセリフ、やや低めな色彩温度もイギリスっぽくて最&高。極微量のSF性でもってコメディとシリアスを往来する展開も観るものを飽きさせない。
そして数多ある名シーンの中でもやはり外せないのは主人公ティムの結婚式ではないだろうか。たった数分間のシーンの中に、大切なのはどんな場面も笑って乗り越えていける誰かの存在であるということが、まるで人生の縮図の様に描かれている。
さて「ネタバレなし」で油断したところへ普通にネタバレを挿入していくスタイルもほどほどに、件のThe Luckiestである。
楽曲は極めて王道であり、エエ歌をピアノで弾き語るという「マッキーかな?」スタイルだが、やはりピアノ弾き語りは染みる。深みのある音色、コードと同時にウワモノとしての役割を担い、感情を揺さぶるバファリンのもう半分みたいなsomethingを併せ持つ最強の楽器だと再認識させられてしまう。触ったことねぇけど。
映画を観て、友人との思い出があって、エエ歌で、それ以外実は語ることなど何もなかったりするのだけど、それを誰かに勧めるなんてエゴであること夥しいのだけど、かつてロリング君(敬称略)のレビューで出会い、素直に心に染み渡り、今も生きる支えになっている音楽は数え切れない。
だから動機は不純であれ10分の1ぐらいはピュアな気持ちで、この素晴らしい作品が、こんな作品を待っていて、それを偶然知らなかった誰かにかすりでもすればいいなぁ、などと思う今日この頃。
これからもナンバーワンの音楽を探求すると同時に、オンリーワンの音楽を増やしていくことも大切にしたい。
…マッキーかな?
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