from 「The Life Pursuit」
ギターポップ注文したら、出てくるやつ
ある夏、英国のケンブリッジにいた。語学学校の壁に貼られたレクリエーションリストに、スコットランド旅行とあってどんなに興奮したことか。僕は文学少年の御多分にもれずベルセバに夢中だった。
エディンバラに着くと、国際フェスティバルがやっていた。ネス湖に恐竜を探しに行かないかと誘われたが、グラスゴーへ行く電車に乗った。
そこはただの地方都市で、手の届きそうな低い雲はスコットランドだった。
向かったのは、グラスゴー・スクール・オブ・アート。
僕は、「Another Sunny Day」を聞いた。エディンバラに向かう電車では、中村俊輔のタオルマフラーを盗まれた。
「Anoter Sunny Day」はベルセバが変わった後の曲だ。
彼らはJeepstarというレーベルから3枚のアルバムを出し、かのRough Tradeに移籍した。移籍後のアルバムは、佳曲も多いのだがどこか「もや」の取れた、輪郭のはっきりした作品が多い。その「もや」がベルセバの魅力だった。
少しだけ前の時代の隠された感覚、ひなびたビルの部屋にいるような気だるさが彼らの美しさだった。
「Another Sunny Day」にはそれを超越した魅力がある。ギターポップを定義するようなギターリフ、一聴して過去を振り返っているとわかる歌声、切なくて死にそうになるメロディ。
ギターポップの奇跡を詰め込んだ曲だ。いつか人類が滅亡して、廃墟から5本足の宇宙人が発掘しても誇れるような曲だ。
ギターポップらしい曲を作ろうって意気込んで作ったんじゃないかな。「もや」がとれたおかげでこの曲には普遍性が宿った。
最後の一節はこう結ぶ。「過去と現在と未来の亡霊が心を捉えて離さない」。
今じゃ団体行動もちゃんとするし、先輩も立てるし嫌な客にも笑いかける。当たり前のことだ。生きているのだから。しなければならないことはするし、大切なことだ。
2014年、グラスゴー・スクール・オブ・アートは火事で大破した。僕にとってのグラスゴーはあそこで、悲しかった。本当に大切なものが燃えていくようで悲しかった。どす黒い炎を見てあの「ある晴れた日」を思い出した。
Wikiを調べると、ベルセバゆかりの地はグラスゴー大学だったらしい。でも良いのだ。過去は僕を捉えて離さない。
コメント
Vgoohさん
「Another Sunny Day」はじめて聴きましたが、どストライクでした!
これを機にベルセバもディグっていきたいと思います。
しかしベルセバはもとより、文章が素敵すぎますね…笑
ありがとうございます!
ベルセバは1〜3枚目が特におススメ(思い入れ補正かもしれませんが笑)ですので、よかったら聞いてみてください!