from「Winning Days」(2004)
おかわりしちゃおっか
ジャケットがダサいなって、そう思っていた時期がありました私にも。
フロントマンにクレイグ・ニコルズ率いるオーストラリアのロックバンド、The vines。
2000年代からのロック・リバイバルブームの中で現れたバンドのひとつとして語られる事が多い彼ら。その実はガレージとグランジの間を行くような、はたまたUSの荒々しさとUKの湿り気を併せ持つ様な不思議なバンドだ。
私の知る限り彼らのアルバムにはとんでもないクオリティの泣きメロが一曲は配置されているのだが、その中でも屈指の名曲と全私を震撼させたのがWinning Daysである。
イントロなしで静かな伴奏と共にクレイグが儚く歌いだすメロディーは解りやすい起伏こそないが、もうメロディーの湿度が高すぎて「サビしかない」の次元に突入している事が確認できる。念のため触れておくが楽曲開始からまだ40秒の出来事だ。
そこから徐々に重なるリズム隊とサイケ感を加速させる多重コーラス。なだれ込むギターソロで涙腺は完全崩壊。
「本当にありがとうございました…」ってこっちから言いかけた2分30秒からまさかのもうひと盛り上がり。気まぐれすぎるシェフのデザートだが蛇足感は皆無。なんだったら湿り気だけで終わらせない、それでいて押し付けがましくない、ささやかな極上ポップス感。
もはや胸焼け不可避とも思われた本作が「意外にあっさりしているね」「おかわりしちゃおっか」と俄かに囁かれ出すのは一重に3分34秒という奇跡のメロディーに執着しない潔さに尽きるだろう。
そしてアルバムジャケットにふと目をやれば、そこにはもはやイカしたアートワークを発見する事しか出来ない筈だ。