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Tash Sultana「Free Mind」

10s

from「Flow State」(2019)

ロリング君がバンド活動で学んだこと

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ギターがプロ並みに上手いH君(変な髪型)

わたしが高校生だった頃、学校の中でダントツにギターが上手い奴がいたH君としよう。体型はぽっちゃり型で、前髪をアシンメトリーにして変だったためモテるタイプでは全くなかったが、テクニックは高校生離れしていた。H君の速弾きは当時の我々の感覚からすると最早”プロ並み”だった。

わたしは当時バンドを結成していて、オアシスとかニルヴァーナのコピーをしていた。そのバンドからギタリストが脱退した。オレはH君に「バンドに入ってくれや!」と声をかけ、オッケーをもらった。

H君の加入により膨らむ夢(メジャーデビュー)

H君の加入により期待は膨らむ。コレはすごいことになる…もしかしたら話題になって在学中にデビューとかしてまうんちゃうか…と。

そもそもコピバンで何デビューとか言うとんねん、ていう話なんだが、当時の思考はもう「コピーしている曲は俺が書いたも同然」みたいな感覚なのだ。しかもオアシスとかニルヴァーナって曲がシンプルだし、「この良さがわかっている俺にもコレくらいの曲が書ける」みたいな錯覚に陥ってたのよねぇ。だからしゃあないよね!!アハハハハハハ草ァァアアア!!

H君とオレ、聴いてる音楽が違った

さて、H君とわたしは聴いている音楽が異なった。彼はMr.Bigやイングウェイ・マルムスティーンなどハードロック系が好きだった。

わたしはブリットポップやグランジを好み、テクニックと言うよりはシンプルな構成やフックのあるメロディ、サウンドの趣に比重を置いていた(そんな自覚なかったけど)。

ただ、当時はまだハードロックとグランジの違いも明確に理解できていなかった。ロックがどういう歴史を辿ってきたかを知らないし、ジャンルの特徴や位置付けがわかるはずもない。

なので、同じロックが好きなんだから、多少の好みの違いなど問題ではないと思っていた。「早く弾けることは正義」くらいのものである。

徐々に生じる亀裂

しかし、何度か練習やライブをこなすことにより、段々とオレと彼の間に亀裂が生じ始めた

H君は、いかに速いか、もしくはテクニックを披露できるかに焦点を当てがちだった。オアシスやニルヴァーナの曲はやりたくなかったのだろう。

H君はこともあろうに「Smells Like Teen Spirit」のソロパートで速弾きをするようになった。原曲のギターソロは歌メロをなぞるだけのシンプルなもの。

ちょっと待てと。アレンジするのはいいが、明らかに場違いな速弾きである。グルーヴと全くマッチしていない(まあそもそもバンドの演奏にグルーヴなんぞありませんでしけどね!!)。

何とか妥協案を試みるも

わたしは出来る限り原曲の雰囲気は保って欲しいと懇願した。しかし、それでは彼のポテンシャルと志向が活かされる訳も無い。

折衷案として、彼が演奏して楽しそうな曲を選んだりもした。オアシスの1stの「Bring it On Down」とか。速弾きしても違和感がないかどうかが基準になりつつあった。

オレは段々バンドが楽しくなくなっていった。結局、彼は脱退した。追い出したわけでもなく、次にライブして終わりかな、と言う感じに自然となったような気がする。

わたしは学んだ。速弾きができれば良いと言うもんではなかった。曲が何を求めているかを彼はわからなかったし知ろうともしなかった。

バンドを続けるには感性の一致が大切

バンドをやるには感性が合うことが大前提だ。「コレはカッコいい、コレはダサい、でもコレは逆にカッコいい」という感覚が一致していないとうまくいかない。当たり前だけど。

音楽のどこに魅力を感じているかは人によって違う、と言うことを身を以て体験した出来事だった。

徐々に変わるギターの巧さの価値観

と言うわけでここからが本題ですが、現代のギターキッズは速弾きとかそういうのでは満足しなくなってきたのではないか。最近ギターの上手さって感覚が変わってきたと思うのよね。昔はHR/HMの人の直線的な速さがイコールギターの上手さだったのよ。

でもジョン・フルシアンテやジョン・メイヤーが出てきたあたりからファンク的な要素があってこそギターはカッコいい、みたいな価値観に変わってきたと思う。

逆に言えばギター上手い人がHR/HM以外のジャンルに進出してると言うことなのかも。要は速いだけじゃカッコよくないってこと。

スーパーマルチプレイヤーTash Sultana氏

そこでオーストラリア出身女子、Tash Sultana氏ですよ。彼女は様々な楽器を操るスーパーマルチプレイヤーのようですが、彼女のギターと歌がとてもいい。

メディアではジミヘンと比較されているが、ジミヘンかなぁ??彼女はもっとマイルドで親しみやすいギターの印象(時々本気を出して弾きまくる)。打ち込みも多用しているし、いい具合にモダンな響きなのよね。ポップスのような感触でもある。それが物足りないというか、ロックじゃねぇという見方もあるだろう。

弾けまくるのに泥臭くない!!サーフミュージックかよ

しかし。ギター弾けまくるのに泥臭くないっていうのが逆に新鮮なわけよ。ブルージーに攻めたくなるのをぐっとこらえて(?)、サーフミュージックのような軽やかさも備えているサルタナ氏。H君に彼女の演奏を聴かせてやりたかった

彼女の一番の武器は独特の曲調だと思う。サウンドはサーフミュージックのようでもありながら、ハッピーでもなく、シリアスな雰囲気を纏った独特な曲調なのだ。

Murder to the Mind」を聴いていただければわかると思うが、どうよこのアンニュイで大人なメロディ。そしてギターソロは確かにジミヘンばり。

Free Mindヤバい。トキメキが止まらない

アルバム「Flow State」はそんな大人でシリアスなサーフミュージック満載で今年のベストアルバムノミネート間違いなしなわけですが、そんな中わたしの一番のお気に入りは「Free Mind」どす。

いやこれって「青春時代に好きな子と花火見に行く時の気持ち」を音楽にしたとしか言いようがない。ここまでトキメキが止まらない曲なかなかありまへんで。ディレイがかった高音ギター、吐息交じりで幻想的なボーカル。夏の夜に聴いたら死ねる。今聴いてるけど。

そこに切り込む深みのあるギタープレイが曲に奥行きを与えちゃってるのよねぇ。ヤバイねこの曲。

まあ長くなったからこの辺でやめとくけど、アルバム通して聴く価値のある貴重なアーティストどす。「Blackbird」での本気のギタープレイ聴いたら腰抜かすで。

H君元気にしてるかなぁ

ちなみにH君は大学卒業後に音楽専門学校に入学したらしいがその後の消息は不明である。元気で速弾きしていることを祈る。

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