いつもおちゃらけてる奴がマジになったらホレてまうやつ
from「Carrie and Lowell」(2015)
職場の美女とまさかの洋楽トーク
先日、こんなことがありました(しばらくエピソード話が続くので不要な人は飛ばしてください)
職場に二十代で美人でスタイル抜群な女子がいます。性格も明るくて穏やかで完璧です。 彼女とはたまに仕事で話をするくらいの仲でしたが、廊下で出会った時になんとなく世間話をすることになりました。
その時に「洋楽を聴く」みたいな話になったんです(仕事中に何しとんねん)。そんで当然「どんなアーティストを聴くのか」という話になりますわな。
まずは相手の様子を探ることに
わたしのお気に入りアーティストは相手の出方を伺ってからそれに合わせて答えることにしました。まずは彼女が何を聴くのかを探ろう。
その時わたしは心の中でこう思いました。「まあファッションとかキャラクターからして、テイラーかアリアナあたりが妥当か…ビリー・アイリッシュという感じでもない。でも…もしかしたらThe1975とかWeezerとかRadioheadが好きな可能性も僅かながらある」
と、煩悩がうずき始めた。しかし、わたしは自分に言い聞かせた。
期待しない。オルタナなんて期待しない無我の境地に
「いやダメだ。期待するな…期待をすると裏切られる。ボンジョビでもバックストリートボーイズ(世代ちゃうやろ)でもええやないか…確かに洋楽やないか。女子とオルタナの話で盛り上がれるわけがないやろ」
幾度となくそういう経験を重ねてきたわたしの心はもはやネテロ会長の百式観音の域に達していたのだ。
月明かりに照らされた海の水面ばりに穏やかな微笑みを浮かべオレは彼女に尋ねた。
「で、何聴くの?」
どんな答えが返ってきてもオレは全て受け止める準備は出来ていた。
「えー何ですかねぇ?最近はーんーと」
そして、次の瞬間、オレは生まれて初めて女子の100点満点の回答というものを知った。
まさかの衝撃の回答が!!
「あっ、最近はずっとSystem Of A Down聴いてますねー」
オレの心の鼻血が全部出た。
「シ、システム聴いてるん!?」 マジかよ。オレのそれまでの人生が全て報われた気がした。
「システムオブアダウン」という名詞をなんのためらないもなく言い放つ彼女。オレが洋楽痛ということを明確に伝えていないにも関わらず、だ。
リスクを取る姿勢、ステキ過ぎるやん?
後藤真希氏に歪められたオレのロック観
思えば20年前、ミュージックステーションで後藤真希氏がタモさんに言い放った一言がオレの卑屈な魂を生み出したのだ。
「普通ロックなんか聴かないですよね」
これにより「一般的な女子はロックなんか聴かないんだ…ロックを聴くことはカッコいいと思っていたのに女子は全然興味ないんだ」とピュアなハートを砕かれた。
しかし、同じ職場に「Chop Suey!」を一緒に口ずさめる女子がいる。これを希望と呼ばずになんと呼ぶのか。
ここから本題:意外な一面を見るとホレてまう
そんなこんなで素敵な洋楽仲間が増えたわけですが、伝えたかったことは「人の意外な一面を見るとホレてまうやろ」ということ。
今回のSufjan Stevensがそうなんです。
彼はアメリカの全部の州についてアルバムを作る!と言って作り始めて途中でやめてる変わり者。
UFOの曲があったり、1アルバム20曲以上収録したり、なかなかクセのあるシンガーソングライターなんです。
「Carrie & Lowell」がマジ泣ける作品に
そんな彼が2015年に「Carrie & Lowell」(母親と義理の父親の名前)をリリースしました。これが全然ふざけていないマジで泣ける作品だったわけです。
そのアルバムの冒頭曲「Death with Dignity」は、その名の通り尊厳死に関する曲なんですが、病死した自分の母親に捧げられています。
わたし、彼の作品の中でトップクラスにこの曲が好きなんです。
優しくてドラマティックな構成に引き込まれる
最初はそんな思いが込められてるとは思わずに聴いていましたが、繰り返し聴いていくうちに、シンプルなアルペジオの美しさや、囁くような彼の歌声、優しいのにドラマティックなメロディの展開に引き込まれるようになりました。
そして曲の意味とかを調べるうちに、重い背景があることを知ったのです。
ホレました。時々ポップな曲を書くフォークシンガーかと思っていたら、わけわからんエレクトリックなアルバムを出したり、変わり者だと思っていたら急に「Death with Dignity」ですよ。
歌詞も詩的でありながら、直接母親に語りかける内容でとても美しい。これは泣いてまうわ。
よくよく考えたら過去にも「John Wayne Gacy Jr.」とか名バラードを作ってたんだよな。タイトルとかコンセプトに惑わされてたけど。
「Death with Dignity」は彼が心から自然に湧き上がってきた感情を昇華するために作った曲なんだろうけれど、そういう楽曲が一番心に響くって、つくづくアートって不思議だなぁと思う。
コメント
いつも楽しく読ませてもらってます。
僕もスフィアンにはこのアルバム聴くまで同じような印象持ってました。で、同じようにこのアルバム聴いて同じように頭のこの曲でやられちゃいました。
ありがとうございます!最初は地味な曲だなぁと思ってたんですけど、今では大好きな曲です
ロリングさん
ちょうど先週末にTSUTAYAで「君の名前で僕を呼んで」を借りて観たとこです。
最後のシーンとそこに流れる音楽が素晴らしくて、何ていう曲だろうと調べたらスフィアンさんの「Visions of Gideon」でした。
なので今回のレビュー、私的にはビンゴ!!です(笑)
スフィアンさん、今回初めて聴いたんですけど素敵ですね。職場の方にも薦められましたか?
ロリングさんのシステムがダウンしないことを祈っております…。
ありがとうございます!「Visions of Gideon」も彼の真剣な一面が見える名曲ですよね。映画はまだ観てないんですが、面白そうですね。
職場の美女にはまだ薦めてません!笑 システムがダウンするのが怖いので…笑