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My Chemical Romance「Welcome To The Black Parade」

00s

再始動が決まったマイケミカルロマンス。今回は前身のサイトである「ザ・ローリングサンダーレビュー」時代に掲載したレビューをお届けします!2013年当時、彼らが解散を発表した時に書いたものです。

祝!!マイケミ復活記念レビュー

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悲運の大名盤「The Black Parade」

2013年3月、ついに恐れていたことが現実になった。「My Chemical Romance解散」。そのニュースは世界を駆け巡った。衝撃は受けたが私は静かにその事実を受け止めた。

私にできることは彼らの残した素晴らしい作品を皆様に正しく理解していただくのみである。悲運の大名盤「The Black Parade」。

何が悲運か。数字である。なんと、この00年代ギターロックの代表的作品がアメリカで130万枚しか売れていないのだ。全世界では300万枚強。おかしい。コンセプト、クオリティ、インパクト、ビジュアル、どれをとってものGreen Dayの「American Idiot」(全世界で1000万枚以上のセールス)に負けていない。いやもう勝っているといってもいい。

クイーンなOPからのハードでポップな「Dead!」

オープニングのタイトルが「The End.」というのも面白い。アコースティックなAメロからのドラマティックな展開はまさにクイーン。しかし彼らが単なる模倣をするはずがなく、あくまでおバカで尖っている。転調も絶妙な素晴らしいメロディにも関わらず「序曲」のため1分52秒で終え、次の「Dead!」につなげる。

ハードでポップな疾走感。ここまでストレートにロックの躍動を味わえる曲はなかなかない。それなのにブラスやオペラ風コーラスを絡める変化球アレンジも欠かさない。リズムギターにも細かい変化を加えるなど、メロディの良さに刺激を受けた遊び心が垣間見える。前作の「I’m Not Okay」を飛び越えた名曲だ。

This Is How I Disappear」はコミックメタルの最高峰である。イントロの思わずカラダが動いてしまう大仰なキメの連発がうまい。さらに一歩間違えたらお笑いソングになってしまうアレンジ(高速ミュートギターなど)をサビのパンチ力で貫禄の名曲へと仕上げている。

音楽の女神が味方についた今しかない!

そして彼らのブレイク(私はブレイクし足りなかったと感じているが)を決定付けた「Welcome To The Black Parade」である。ピアノの単音から始まり、マーチングバンド風のリズムが加わる。そしてジミヘンのアメリカ国歌級のダイナミックギターが炸裂。

シャウトするボーカルも最高にクールである。と、思いきや急にメロコアばりのハイスピードポップソングに切り替わる。私は当初、この展開には反対だった。前半のマーチングバンドを貫いて欲しかった。

しかし今は彼らの意図が理解できる。二つの曲を一つにまとめるにはありあまる創造力が必要だ。「音楽の女神が味方についた今しかない!」と判断したのだろう。他の時期だったら別々の曲になっていたかもしれない。

My Chemical Romance – "Welcome To The Black Parade" [Live In Mexico]

Coldplayも真っ青の「I Don’t Love You」

そしてついに来ましたマイケミ初(?)の泣きのバラード「I Don’t Love You」。Coldplayの「Yellow」をハードロック的に解釈したかのような激情型の泣きメロである。サビの「When you go would you even turn to say」の哀しさは異常である。

メロディにここまで胸を締め付けられることがあるだろうか。全俺が泣いた名曲。オシャレボーイズにはバカにされ、女子からは蔑まれ、ロックのおかげでメインストリームから外れた青春を送る羽目になったが、洋楽痛でいて良かったと心から思う。

ハードなロカビリー「House Of Wolves」、おバカなノリとカワイイメロディに重いサウンドの組み合わせが最高に気持ち良い「Teenagers」など、楽曲のクオリティの高さは凄まじい。

邦楽にも通ずる名バラード「Disenchanted」

そして馬鹿騒ぎの「Teenagers」の後に聴こえてくるアコギのアルペジオ…そうなんです、「I Don’t Love You」と双璧をなすバラード「Disenchanted」である。ここまで思いっきり「静かなAメロ、激しいAメロ、切ないBメロ、号泣のサビ」とドラマティックにやられるとこちらも素直に従うしかない。このわかりやすさは邦楽にも通ずるところがある。

ラストは「Famous Last Words」。まったく手を抜く気はないようだ。ピンチ系のメロディを感情を抑え付け歌うボーカルが素晴らしい。エモとはこういうことをいうのである。サビで一転ポップ化するところにも彼らの決意が見える。
これほどまでにアルバムを作ったバンドの新作が当分聴けないのであ(Mansunのように未発表の新作はあるはず)。

ブレイクよりも続けるほうが難しい

これはロッキンボーイズ業界にとって大きな損失だ。続く「Danger Days」もシングルカットのチョイスは完全に誤ったが、とてもいいアルバムだった。

才能にあふれ、名盤を産んだバンドが解散しなければいけない音楽業界…ブレイクすることよりも「続けること」のほうが難しい。マジメなレビューで恐縮ですが、わたしは結構悲しいです。

Alex Lahey covers My Chemical Romance 'Welcome to the Black Parade' for Like A Version

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