from「Figure 8」(2000)
三大鬱ロッカー
かつて3大鬱ロッカーとしてわたしの心を救い続けたアーティストがいたことをご存知だろうか(知らねえよ)。Sparklehorse、Eels、そしてElliott Smithである。彼らの音楽の共通点は、どこか影があって、そして美しい。シンプルなフォークソングのスタイルをとりながら、その背後には膨大な音楽的背景が垣間見える。
今回ご紹介するエリオット・スミスは三大鬱ロッカーの中でも透明感のある楽曲が特徴的である。冷たい感触のメロディに線の細い声やアコースティックな音作りなど、商業性にとらわれず自らの表現を追求した姿勢は今でも心打たれる。
そんな彼の作品の中でわたしが最も感銘を受けたのが「Figure 8」だ。あの印象的なジャケットもさることながら、楽曲が(ロック的な)サービス精神性に溢れていて、メロディの表情が最も豊かに表れている。
「Figure 8」に収録されている「Junk Bond Trader」は、彼の楽曲の中でもとりわけビートが重要な役割を果たしている。ゆったりとした跳ねるビートの隙間に音を詰め込んでいて、不思議な浮遊感を生んでいるのだ。
転がるようなピアノのリフとドラムのためっぷりには中毒性があり、感情が読めない憂いのあるメロディも唯一無二。よくこのリフにこのメロディが乗ったなぁと感動させられる。独創的ながら違和感はなく、とても自然にリフと絡んでいる。これぞイデアのメロディよ。彼の歌声もUK的な湿りを帯びていて、言葉の一つ一つをとても大事に発音している点に彼の誠実さが表れているではないか。
声ちっちぇなぁとかパンチが効いてねぇとか昔は思っていたが、今となっては彼の儚い音楽はわたしのロッキンライフに必要不可欠な存在となっている。もし未聴の方がいたら聴いてみてね!