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Ben Folds Five「Sports & Wine」

90s

from 「Ben Folds Five」(1995)

ローリング土下座

わたしは昔からコード進行を調べるのがとても好きだった。子供の頃から音楽の不思議について興味があったこともあり、学生時代、暇があればバンドスコアなどを購入したりしてコード進行を調べていた。

最初に音楽のルールを学んだのはoasisからだった。オアシスの曲はシンプルでキーが数種類しかなく、そこからコード進行には基本的なパターンが存在することを知った。そして、何より嬉しかったのが、「基本パターンでも名曲が生み出せる」という事実だった。「Live Foever」、「Some Might Say」など、当時高校生のわたしでもコードをなぞることができた。そんなシンプルな曲が音楽界を熱狂させているということに魅せられた。

今思えば「基本的な知識やテクニックがあれば、あとは自分の感性だけで創造できる(ようにみえる)」というのがわたしにとって最大の魅力だったのかもしれない。

そんなわけでコード進行のパターンを身体で覚えることが大事だと信じていたわたしは様々なアーティストの曲を調べ、「ワイはコード進行マスターや!」くらいに思っていた学生時代。

そんなときに出会ったのがBen Folds Fiveだった。ジャズだったりビッグバンド全盛のアメリカンポップスだったり、バート・バカラック風だったり、懐かしい感じもするが決して古くはない。要は彼らはシンセサイザーなどのテクノロジーが発達する以前の「コード進行で勝負するしかなかった時代の音楽」をアレンジして現代に蘇らせたのだ。

彼らの音楽は、わたしのコード進行の知識では到底太刀打ちできないほどに複雑かつ美しく、なのにロック魂が感じられた。わたしは陳腐な自信が打ち砕かれるのを感じるとともにさらに世界が広がった気がしたのだった。

彼らのデビューアルバムはそらもうマスターピースといってもいいほどの完成度。青臭いところなんか微塵もないプロフェッショナルの塊である。大好きな曲だらけでどれか一曲を紹介するとしたら…散々迷った挙句、「Sports & Wine」を推したい。

この曲が恐ろしいのは、カフェで流れてきそうなオシャレコード進行と疾走感溢れるロッキンビートで転がしてしまった点である。メロディだけを取り出せば優雅な貴族のティータイムにピッタリの雰囲気なのに、ハイスピードで演奏することでコミカルさが加わり新しい表現に到達しているのだ!

ラストの鍵盤を叩きつけるようなパートはカオティックに見せかけといてめちゃくちゃ整合性のとれた演奏になっているという新人離れした神業にもはやわたしが直々にローリング土下座をしても収拾がつかない大変なことになってしまっているといっても過言ではない。

とにかく、コード進行の可能性を最大限に引き出し、楽曲を少しでも良いものにしようとするその姿勢に今でも感動するのだ。

Apple Music : Ben Folds Five「Sports & Wine」

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