スポンサーリンク

Avicii「Dear Boy」

10s

From「True」(2013)

アヴィーチーが起こした革命の根本は、EDMに人間くささを持ち込んだことだと思う。人間くささとは言い換えればワビサビである。機械的で無機質なビートに有機的な人の存在を持ち込んだのだ。もちろんそれまでも歌とEDMは普通に共存してきたが、生々しいカントリー調の歌メロとEDMのビートが融合するなんて思いもよらなかった。基本的にアヴィーチーはダンスよりもまず歌が好きだったんだと思う。弾き語りで演奏しても違和感のない曲が多数を占めるし、迫力よりも音の空間の隙間を重視していたりする。

そして歌だけでなくリフのメロディにも歌心を込めるアヴィーチー。わたしが最初に感銘を受けたのが「Dear Boy」だった。アヴィーチーにしては珍しい長めのイントロ。そしてアンニュイなAメロと情熱的なサビに惹きつけられる。素晴らしいのは間奏のリフが二段階で構成されている点である。

例えば、常に一流のパフェを提供してくれるタカノフルーツパーラーのフルーツパフェは容器の奥のほうにもう一つフルーツが隠されている。二流のパフェは上の方だけ食べたら後はコーンフレークでお茶を濁すだけのガッカリ仕様であるが、お客さまをどうやって喜ばせようかと考えているところはやはり違う。

アヴィーチーも同様である。これで終わりかと思わせてからのさらなる展開。サービス精神の塊である。しかもその間奏にはブレイクが超クールにキめられちゃってるからもうたまんない。ダンスよりの楽曲にもかかわらず、ビートに頼るわけではなく、メロディとアレンジでとことん聴き手を楽しませようという気概が伝わる名曲なのだ。

この傑作をシングルカットしなかったアヴィーチー。いつか叱ってやろうと思っていたが、それも叶わなくなってしまった。

「世界中を旅しながらパフォーマンスできるのは、ありがたいことさ。でもアーティストではない、いち人間としての人生がとても希薄になってしまった」

アーティストとして世界中に自分の音楽が届けられ、正当に評価され、愛されていたにも関わらず自ら命を絶ったアヴィーチー。また今年も人の幸せについて考えるしかない。

Apple Music: AviciiDear Boy

コメント

タイトルとURLをコピーしました