from「Attack On Memory」
徒労の日々とカタルシス
どうしようもない事がある。報われなかったり理不尽な思いをしたり、生きているとそれらの障害は不幸以前の現実として日常に散りばめられている。ってね、いやいやいやこんなしみったれた話をしたい訳じゃなくて。
まぁなんちゅうかありますでしょう?泣きたくて暴れたくって、破滅衝動に取り憑かれた夜が貴方にも。でもそんな夜にだって音楽は寄り添ってくれる。どんな偉人の言葉も届きやしないのに音楽は理屈抜きでこの歪な感情にハモってくる。
私の場合はそんなときよくエモにお世話になった。エモには頭が上がらない。あの荒削りな演奏にセンチメンタルなポップ感、不安定に揺らぎ割れる声。自分で言葉に出来ないことはそれらが代弁してくれている様な気持ちになった。
そして2012年。大人になっても変わらずダメな、そんな私の前に奴らは現れた。名をCloud Nothings。
本作が二作目となるバンドだが、このアルバム「Attack On Memory」がヤバすぎた。過去の何とも違った、異常なまでにザラついた最新系のエモがそこにはあった。アルバムは30分程度とコンパクトなので、是非フルでの視聴を推奨したいが、ここから一曲を選ぶなら私は「Wasted Days」一択だ。
「No future/No past」でささくれ立った心に、なだれ込んだ本曲のイントロでこのギターリフ聴かされたらもうどうしようもない。ベースとドラムの疾走感が絡んで、極めつけはボーカルの声、鼻にかかって少し不安定で割れ割れの声。エモ以外の何ものでもない。
興奮しきって失念していたところに「さーせん。まだAメロなんすわ」ってサビに突入する。するやいなやリフは変わりシリアスなメロディを奏でやがる。どうなっちゃってんのよこれ。
しかしこの曲3分経過あたりからスローダウンした単調なリズムと神経に触れるようなギター、何とも言えない奇妙なSEで、音響系さながらの形態へメタモルフォーゼ。
しかもこれが5分ぐらい続く。長尺曲が苦手な元来の私なら長ぇよ。蛇足だよ。と悪態もつきはじめるのだがどうしたことか。快楽指数はメーターを振り切らんばかりで、集中力は途切れることなく感覚はただひたすらに曲と同期している。
間奏どころではなくなった壮大な5分間のインストは躁と鬱を繰り返すように展開し、言葉以上にその「徒労の日々」を物語る。そしてラストのサビで総ての感情が爆発しカタルシスを起こす。
叫びのような、嗚咽のような声が、ギターが、ベースが、ドラムが、総てがエモーショナルの絶頂を迎える。「I thought I would be more than this」本当にどうしようもない。
これを避けて通れる人などいないだろう。でもこの音楽を聴いていると思う。忌むべき徒労の日々なくして人生は無駄にすらなれないのではないだろうか。
Apple Music: Cloud Nothings「Wasted Days」
コメント
わかりますわかります、その歪な感情。で、そんな時このアルバムに僕もお世話になりました(僕の場合はno future / no pastがドンズバでした)。
cloud nothingsのこの次のアルバムのラストトラックもそんな時よく聴きます。
こちらはドーナツさんという読者の方からの投稿レビューですね!我々3人とも同世代かもしれません笑