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【投稿作品】Van Morrison 「Queen Of Slipstream」by よんきー

80s

from 「Poetic Campion Compose」(1987)

何の変哲もないドラマにこそオーケストラを

私の妻はドラマ好き。録画したものをしょっちゅう観ている。まぁしょーがないから、私もたまに付き合うがどうしても「あー、もう無理無理!」と観ていられない時がある。どういう時ってあれですよあれ、大袈裟なBGMですよ。

なんなんすかあれは!「はい、皆さん、ここ感動するところですよ」って押し付けるが如くの大袈裟なストリングス!そーいう時私はスゴスゴとリビングから退避。マイ・コンポの前に行きイヤホンをぶっ挿します。あー、ロックよ私の耳を癒しておくれ。

音楽でもありますよね。静かにピアノで始まり、とりあえずサビでストリングス入れとけやってやつ。おい、一部のJ-POP!おめぇのことだ!あ、申し訳ない、つい下品な言葉を。

とはいえオーケストラって難しいんすよ多分。そりゃ一気にスケール感が出て盛り上がるから、使いたくなる気持ちは分かります。ただ、やり過ぎるねぇ。一気に醒めちゃう。曲の本質がオーケストラに持ってかれてどっか行っちゃうんです。

ま、持ってかれないだけの力が曲に備わっていればいいんですけど、オーケストラそのものの使い方にも非常に注意を払わないといけないところなんです。オーケストラは暴れ馬、決して安易に使ってはならんのです!

その辺りが抜群に上手いのが英国の国民的バンド、ステレオフォニックス。オーケストラがステフォの手のひらにあるというか、ちゃんとコントロールしてるんです。決してオーケストラに引っ張られてない。引き算のオーケストラが出来るんです。

もう一組、というかもう一人、その辺りの手綱捌きが抜群なのが、同じくイギリスは北アイルランド出身の偏屈オヤジ、ヴァン・モリソン御大です。紹介するのは「Queen Of Slipstream」。なんじゃそりゃ、ステレオフォニックスちゃうんかい!

歌詞は一見、なんの変哲もないラブ・ソング。しかしそれは年月を重ねたカップルの歌。だから何の変哲もないラブ・ソングではないのです。言葉の一つ一つに重みがある。長い長い道のりを感じるのです。

そこでオーケストラですよ。ここに至っては余計なギミックは必要ない。ベタなオーケストラしかないんです。けれど人の行き越し方なんて、考えてみればベタそのもの。その積み重ねこそが人生でもある訳で、そこを踏まえての何の変哲もない歌詞と何の変哲もないオーケストラだと考えるとこれはやっぱり感動的なんです。

要するに何回も何回も回った上でのオーケストラ。頭で理解するのではなくて、経験によって裏打ちされた当たり前の何でもない人生の意味がここにある。だから大袈裟なオーケストラが心を打つんです。最後の最後にこれでもかと更にもう一盛り上がりするオーケストラはそういうこと。あぁ、人生は素晴らしい!御大、もう何回人生回ったんすか!!

妻よ。本当に大切なことは作られたドラマの中にはないのだよ。何の変哲もない日常にこそそれはあるのだ。

って、そんなことオレには言えねぇーっ!

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