デイヴのセルフオペ
漫画ブラックジャックの中に「ディンゴ」という話がある。
内容は割愛するが、話の中にブラックジャックが自らを手術するシーンがあり、当時のわたしは子どもながらに「インサニティ…」と思ったものだ。
そしてインディーロックの世界にも、そうした人物がいたことをわたしは知る。
dirty projectorsのデイヴ・ロングストレスだ。
アルバム「dirty projectors」収録「keep your name」は祝福の鐘の音から始まり、ソッコーでバグる。
もの悲しい伴奏で歌うデイヴのバリトンボイス。なんと美しいメロディであろうか。徐々に土着的なパーカッションが加わり、楽曲は肉体性を帯びる。
サンプリングされた女性の歌声が響き、不穏に繰り返されるのだが、この歌声の主アンバー・コフマンはdirty projectorsの元メンバーであり、同時にデイヴの元恋人である。
そろそろこの楽曲のインサニティっぷりがお分かりいただけただろうか。
歌はすれ違い、離れたふたりを歌っており、そして「you keep your name」と繰り返す。この時デイヴとアンバーは既に破局しており、この曲はデイヴの感傷を切り開き、観察し、弄りたおしたセルフオペの上に成り立っていると言える。
何故そうまでするのか、芸術とはそんなにも修羅の道かとデイヴの心境に思いを馳せつつ、何げなくアンバー・コフマンについて調べると、ソロ・アルバムリリースのアナウンス。
アンバーも頑張ってんねや…と詳細を見ると、プロデュースにデイヴ・ロングストレスとある。円満かよ。
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