from「Bible Belt」(2009)
バラでヴィンテージ
エレピが好きです。特にフェンダー・ローズが好きです。柔らかな余韻に脳みそがとろけそうになります。なんでしょうな、あの柔らかな音は。お豆腐か。温かいから湯豆腐か。いやいや、はふっはふっヤケドするような熱さじゃねぇな。やっぱローズっていうぐらいだからバラだね。
バラと言ってもヴィンテージな感じ。バラでヴィンテージ、バラでヴィンテージ、、、、バラでヴィンテージっつったら枯れてるじゃねぇか、コノヤロー!うっ、失礼。私としたことが取り乱してしまいました。
いや~、好きなんすよローズ・ピアノが。でもローズって結構使われているけど、あんまりメインの楽器にはならないんですよね。隠し味ってんですか、柔らかさを添えるっていうか、やっぱ脇役なんすよね~。と思ったらありました、とっておきの名曲が。
それが今回ご紹介するDiane Birchの「Nothing But a Miracle」です。
イントロです。イントロがフェンダー・ローズなんです。行間を奏でるフェンダー・ローズで静かに始まり、フリューゲルホルン、そしてコーラスが重なるイントロはまるで魔法の粉が降りかかったかのような美しさ。
そして始まるボーカルは見目麗しきDiane Birch嬢の野太い声。そうなんです。彼女、見かけによらず若干低めで喉の震えが直接響いてくるような野太い声の持ち主なんです。
ところがここぞという時にはファルセットで一気に駆け上がる。その地声との境目が分からないぐらい一気に駆け上がる様に思わずウットリしてしまいます。一方でファルセットじゃなく地声で押し切るところもあって、これがちょっとダミ声気味でまたいいんです。
そんでもってバックを務めるバンドがまた素晴らしいのなんの。やっぱあれっすね。上手い人って無駄に前に出て来ないのよ。それでいて大事なとこだけサラッと印象付けてしまう。
的確なドラム捌きに時々エレキ・ギターのビィ~ンっていう余韻が聴こえてくる。ホーン隊も穏やかに彩りを添える。加えてDiane Birch嬢のピアノ、そしてコーラス。これらがケンカせず仲良く情感を奏でているのです。
で2番になると歌詞を畳み掛けてくる。感情に任せて早口でまくしたてるんですね。けれども見目麗しきDiane Birch嬢の体内時計はコンマ1秒も狂うこと無く見事に言葉をフックさせ、そしてサビに向けたファルセット。ブリッジは地声で感情をたぎらせて、最後はもう一段上のファルセットでラスサビへなだれ込む。一方、こん時の落ち着き払った演奏がまたニクイ!
まぁ、演奏がガッツリ入ってきますと、フェンダー・ローズもそんな目立たなくなりますが、最後までキチッと見目麗しきDiane Birch嬢が奏でてくれてます。時折聴こえてくると俄然嬉しくなりますね。まぁ曲自体も素晴らしいですけど、演奏、ボーカル、どれをとっても一級品ですから、そら悪かろうはずがない。
中でもイントロ。このイントロこそが私の心を癒す最大級の特効薬です。よし、お薬手帳に「Nothing But a Miracle」と書いておこう。奇跡でも起きないかぎりか…。それはそれで不吉やな…。
バラでヴィンテージ。ふくよかなフェンダー・ローズのかぐわしき香り。ええ、枯れちゃあなんぞいません。ヴィンテージなバラは枯れちゃあなんぞいませんぞ。
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