ディランガチャ状態
アホな天才、ボブディラン
Bob Dylanにハマると幸せが待っている。
作品が膨大にあるから?その通り。しかしそれだけではない。
最も大きな理由はボブ・ディランが「アホな天才」だからである。
なぜ「アホ」なのか。未発表曲集であるBootlegシリーズやBiographを聴けば分かる。ディランはとんでもない名曲をボツにしているのだ。
その上、駄曲でアルバムを構成したりする。暗黒の80年代においても、未発表曲を聴く限りディランは結構な名曲を残している。
アホなんですかと。その未発表曲、アルバムに入れろや。
射幸心を煽るディランガチャ
しかもその気まぐれというか謎のジャッジのおかげで若かりし頃のわたしはディランに散財するハメになった。しかし、散財をしている間、わたしは幸せだった。
どこから名曲が出てくるかわからない。脳内からはドーパミンがドバドバ出て止まらない。言わば「ディランガチャ」状態である。コレほどまでに射幸心を煽るアーティストが他にいただろうか。
わたしのようなロックに散財するダメダメな洋楽痛を増やして良いのか。法律で取り締まるべきではないのか。
サブスクでディランを味わい尽くせ
いや、増やして良いだろう。人生は死ぬまで楽しまないといけない。キミも「ディランガチャ地獄」に陥ればよいのだ。これほど楽しいものはない。
しかも今はサブスクで聴き放題…ワイが費やした金額はなんやったんやと。ということで「ディランの未発表曲を味わい尽くす」というサブスクの楽しみ方はまだまだあるで!!
さて、未発表曲についてはまた別の機会に語ることとして、そんなディランガチャ地獄で散財したわたしが最も聴いたアルバムが「Blood on the Tracks」である。
70年代のディランが最強説
このアルバムの素晴らしい点は、音の良さ、声の張り、曲の質の全てが揃っていること。
60年代は曲は素晴らしいが音質が悪い。もちろんそこに味があることはわかるが、音の迫力という点では少々残念でもある。
80年代以降は曲も声もダメになっていく(未発表曲は良かったりするけど!)。
90年代は曲のクオリティが急に上がるが、声がもう聴けたもんじゃない笑
そう考えると、70年代ディラン最強説が浮上するのだ。
以下のレビューはディランが2016年のノーベル文学賞受賞時に書いたもの。なかなか熱い内容だったため、改めてここに掲載したい。
コロナウィルスで来日が中止になったボブ・ディラン、代わりにわたしのレビューを楽しんでいただきたい。
ボブディラン、ノーベル文学賞受賞という偉業
まあ色々あったが、ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞という偉業の瞬間をタイムリーに知ることができてとてもラッキーだと思う。
メディアであれほど「ボブ・ディラン」という言葉を聞いたことがかつてあっただろうか。
ただ、歌詞は文学なのか、という点は難しいところではある。歌詞はメロディを伴って初めて完結するものだからだ。
歌詞は文学なのか
メロディがなければ思いつかなかった言葉もあるだろうし、メロディに合わせるために言葉を削ったりもしただろう。
メロディのピークに力強い言葉を持ってきたり。よってディランの歌詞はメロディの素晴らしさとは切り離せないものだ。
作家の中には異論を唱えた人達もいて、その気持ちもわかる。今回は音楽と一体で文学と認められたということなのだろうか。
どちらにせよ、ディランの作品が改めて注目されるきっかけになったし、最高峰の栄誉であることは間違い無いので、とても刺激的なグッドニュースだった。
恐るべき完成度「Blood on the Tracks」
受賞発表後しばらくシカトを決め込んだ結果、素直に喜ぶという離れ業も見事だった笑
さて、膨大な作品がリリースされているディラン。マスコミが報道するのは「Blowin in the Wind」ばかり。
確かに時代を変えたのは60年代の作品が中心だ。しかし、ディラン個人として最も完成度が高かったのが70年代、作品でいえば「Blood On the Tracks」なのである。
作曲能力、言葉の閃き、声の艶、どれを取ってもここでピークを迎えたと言わざるをえない。
各年代でディランを一枚ずつ持っておくとしたら、70年代はコレで決まりだ!
タイトルだけで名曲「Tangled Up in Blue」
「Tangled Up In Blue」はタイトルだけでもう名曲の予感しかしない。ゆるーいテンポで始まり、サビで畳み掛けるスリリングな展開がたまんない。
いや、音圧がスゴイとか疾走感があるとかじゃないのよ。演奏は結構柔らかいんだけど、ディランの声の力強さと言葉のパンチのおかげで迫力が倍増してるっつーわけ。
最強のバラード「運命のひとひねり」
美しくて泣けてくる「Simple Twist Of Fate」。今作最強の名曲といっていいだろう。放題の通り「運命のひとひねり」である。
この男と女のストーリーを読んでいると、(メロディありきとはいえ)文学と捉えられるのも納得な情景描写力に圧倒される。
何を伝えたいのかを直接言わないため、情景からストーリーを想像してしまう。ディランのことだから言いたいことなんかないのかもしれないが、何かあると思わせるほどの表現がたくさんでてくるのだ。
さらに切なすぎるメロディとディランの深く抑揚のある声、完璧である。
アウトテイクver.の方が圧倒的に優れている件
惜しいのが「You’re A Big Girl Now」。名バラードである。情熱的で甘く切ない歌。どこが惜しいのか。実はこれを超えるバージョンがアウトテイクになってしまっているのだ。
未発表曲集「Biograph」を君は聴いたか。バンド感は後退し、アコギと歌に重きを置いている。このさりげなく優しさに溢れた歌唱、メロディ、これこそが完成版だと断言したい(そう、サビの「う~うぅ~」のタイミングなど、メロディが少し変わっているのだ)。
アルバム収録バージョンは完成品を崩したライブバージョンみたいなものである。なんでこっちを収録しなかったのか。これはまたもや”アホか事件簿”である。
力強いギターと歌声「Shelter From the Storm」
1996年のトム・クルーズ主演の映画「Jerry Maguire」(放題:「ジ・エージェント」)で使用され、改めて脚光を浴びた「Shelter From The Storm」。ちなみに映画で使われたのは別バージョンで、確かベストアルバムに収録されている。
「Simple Twist Of Fate」と併せてこちらもハイライトである。聴きどころは波打つような力強いアコギのストロークとディランの歌(当たり前)。
言葉のパンチとメロディのピークの合致具合がとてつもなく快感なのだ。一音に言葉を詰め込むスタイルの到達点ではないだろうか。映画のエンドロールのような心地よい寂しさが胸に残る。やっぱすげぇよディラン。
ディランはインタビューで作曲について「言葉とメロディは同時に生まれる」と語っている。メロディとともに生まれた言葉は文学なのか。答えは風に吹かれている…うーわ、さっぶ!!ほなさいならー。
Omakeのコーナー:ロックTを探して
UKのサイトのようですが、こんなTシャツがありました。まあほぼ誰もディランTシャツと気づかないでしょうが、またそこが良いですね。
コメント